先週はお仕事でなかなか思い通りにいかなくて、ぐったりと週末を迎えました。土曜日は大雨だったこともあり、何にも考えずにぼーっと観られる映画を探していたところ、Amazon Primeで以前観たおしゃれなフランス映画を発見しました。その名は「タイピスト」(原題: Populaire)。
一言で言うと、1950年代を舞台に、タイプ早打ちに命をかける上司(男)と秘書(女)のポップでキュートなスポ根風味のロマンチック映画です。フランスで2012年公開と少し古いですが、ファッション、インテリア、小物、そしてストーリーまで全てがかわいくて、改めてほっこりしたのでここで紹介させていただきます。
ちなみに今週は父の日でしたがお父さんと見るにはガーリー過ぎるかも。
映画「タイピスト」をお勧めする3つの理由
2013年にはかなり話題になった映画「タイピスト」ですが、まだ観てない方には是非お勧めしたい理由は、以下の3つです。
- こだわっているのにシンプルでほっこりするストーリであること
- とにかく本当におしゃれであること
- 随所にオマージュが散りばめられていて楽しいこと
【理由1】とてもこだわっているのにシンプルでほっこりするストーリー
まず、あらすじはYahoo映画より。
女性にとって大人気の職業が秘書で、さらにタイプライター早打ち大会に勝つことが最高のステータスだった1950年代のフランス。田舎出身のローズ(デボラ・フランソワ)は保険会社の秘書に採用されるが、ぶきっちょで失敗してばかり。そんな彼女の唯一の才能であるタイプ早打ちに目を付けた上司ルイ(ロマン・デュリス)は、二人で協力し、タイプ早打ち世界大会に出ないかと提案する。こうして二人三脚でスポコン並みの猛トレーニングをスタートしたふたりは、パリでの全仏大会に挑むことに。
とこんなストーリーです。
監督のレジス・ロワンサルは、ある日、タイプ早打コンテストのドキュメンタリーTVを見て、「クレイジーだ!」と驚き、この映画のストーリーを思いついたそうです。その後、3~4年かけてリサーチし、ロッキーみたいなスポコン映画を目指してこの映画を製作したとインタビューで話しています。
リサーチに数年を費やし、当時の様子を知る人物や資料を探し、何人かから実際のエピソードを聞いて映画作りをスタートさせたというのでかなりのこだわりぶりが伝わってきます。
それなのに展開は本当にシンプルでローズとルイの出会い、タイプの練習、試合です。その中で、男と女の感情のすれ違い、揺らぎが描かれます。フランス映画らしいラブシーンもちゃっかり入っています。
男は「熱血で優秀な指導者だけど女心が全く分からない」、女は「ドジで要領が悪いけれど一途でかわいい」ので、娯楽映画として、パターン通りのベタな展開です。そんなこともあり、ストーリーはほぼ予測がつき、ほっこりしながら観ることができました。
【理由2】 とにかく本当におしゃれなファッション
この映画のいいところ2つ目はとにかく何処までもポップでおしゃれな映画です。フランス人のこの手のセンスは真似できないと脱帽です。
1950年代、ファッションでググると、「ニュールック」(1947年にクリスチャン・ディーオールが発表した丸みある肩と胸、細く絞られたウエスト、裾の広がったスカートが特徴の女性らしいスタイル。)と出てきます。
この映画もこの辺をイメージしているのでしょうか。
ヒチコック監督の「成金泥棒」や「裏窓」のグレース・ケリーや「麗しのサブリナ」のオードリー・ヘプバーンのワンピース姿と共通するものがあります。
個人的にこの時代のファッションはとても好きなのもあって余計楽しめました。
映画の中の主人公ローズのフレアスカートや甘い色のトップスもレトロで洗礼されているし、タイプライターも何種類か出てくるが衣装とコーディネートされていてとてもかわいいです。また、ヒロインのお粗末なタイピングを改善するためにマニュキュア使ったシーンでローズの指先がとってもキュートでした。
監督によるとタイプライターは、50年代のものを世界各国から200台くらい集めて、もちろんとても古いものを新しいものに見える様に手直しをしたという徹底ぶり。映画の世界観は、観客が50年代にダイブするように細部までこだわり抜いたということで、その世界観だけでも楽しむことが出来ました。
【理由3】随所に散りばめられるオマージュが楽しい
この映画には随所にオマージュがちりばめられていることです。監督の映画Loveが伝わってきてとても楽しいです。
オマージュとは、芸術や文学において、尊敬する作家や作品に影響を受けて、似たような作品を創作することを指す用語です。(Wikipediaより)
まずはポップなオープニング映像はタイプライターメーカーのオリベッティの広告をオマージュしているそうです。個人的に大好きな名タイトルデザイナーのソール・バスを彷彿とさせてテンションが上がりました。
そして、ローズの部屋に、マリリン・モンローとオードリー・ヘップバーンのポートレイトが貼ってあり、映画の中のローズのポニーテール姿(リボン付き)もオードリーそのものでした。
ヒチコックの複数の作品のオマージュも出てきます。
地区大会の会場でタイプライターを前にして座っている参加者の机がズラッと並んでいるシーンは、「アパートの鍵貸します」のオマージュですし、バスルームから出てくるシーン、ネオンライトのラブシーンは「めまい」のオマージュでした。これはヒチコック作品を観た方には分かりやすく楽しいと思います。
また、ローズや女性のカラフルなファッションは「シェルブールの雨傘」のオマージュだと思われます。また、ローズが商店を営む家の娘だったり、父が婚約させたがっているのが自動車整備工の男だったり、この辺りも同映画のオマージュなのではないかと思います。
その他にもインタビューを読んでいるとまだまだオマージュがありそうなのですが、見つけられませんでした。
こんな感じで、とてもキュートではありながら映画好きをくすぐる作品でもあるので、皆さんぜひ観てみてください。